遠くで聞こえる(いつも同じ:改題) (小説)

 ごろり、転がった彼はタバコを吸い始める。
 私はまだじっとしたまま天井を見ていた。安っぽい壁紙。なんとなく豪華に見せているだけのそれに私はため息をついた。
 どうして好きでもないのに一緒にいるのだろう?
 好きでもないのについてきたのは私だけど。

 だって彼はいつもさびしそうな瞳をしていた。
 いつもまわりにとりまきがいて、飲みに行ってもどこでも知り合いの女の人ばかりで楽しそうにしていた。私なんか関係ない女だと思っていた。
 それなのにこうして今隣にいるのは彼だった。
 どうして?

 彼はタバコの煙を吐きながら私のほうを見る。
「何時までに家に帰ればいいんだっけ?」
 もう門限過ぎてます、とはいえなかった。20代半ばも過ぎて門限なんていったら笑われそうで。本当は22時までだったがもうそろそろ終電の時間だった。
 私はベッドを出て服を着始める。
 彼は後ろから私を抱きすくめた。
「もう門限すぎてるなら、明日帰ったら?」
 体もだるいし、ここにくるまでにそうとう呑んできたのでしんどい。できることならそうしたいが、朝まで彼と一緒にいたらもう戻れない気がした。
 明日は、あのひとと会う日だし、ちゃんと服も選んで化粧もばっちりしたい。化粧のりの悪い日にはしたくない。
「いえ、もう帰ります」
 彼を振り切って服を着る。
 捨てられた子犬のような目、とはこういうものだろうか。
 彼はじいっと私を見ていた。
 それに負けないように私はかばんを肩にかける。
「今日はご馳走さまでした。また、今度」
 そういってドアを開ける。
「うん。また」
 彼のその言葉に私は立ち止まった。
 もう彼から逃れることはできない。彼氏が明日の昼から私を待っているのは分かっているのに。
「もう・・・」
 靴を脱ぎ、私は彼に近寄った。彼は微動だにしなかったが私はぐいっと服を引っ張って口づけする。
「ひとりになんか、させないから」

 お互い一人ではないのに、私はそういった。
[PR]
by tatsumakido | 2007-12-21 22:24 | 雑記
<< プレゼント(小説) 明日は忘年会 >>